変形性膝関節症に効果的な痛みを抑える薬について整形外科医が詳しく解説します。
変形性膝関節症では膝の痛みを抑える薬が処方されますが、それだけでは症状の進行は防ぐことができません。薬についての注意点も併せて紹介します。変形性膝関節症の治療中の方は必見。
変形性膝関節症変形性膝関節症は脚の筋力の低下や加齢などの要因によって、膝の軟骨がすり減ることで炎症がおき、膝に痛みを感じる病気です。
初期では歩き始める時に痛みを感じる、正座すると痛い、階段の上り下りが痛いなどの症状が現れます。症状が進行して、末期になると膝の変形が外から見てもわかるようになり、歩くことができなくなってしまいます。
膝の痛みを引き起こす代表的な疾患です。
詳しくは変形性膝関節症とは?の記事もご参照ください。
目次
変形性膝関節症における薬の効果とは
薬で変形性膝関節症の痛みを抑える
変形性膝関節症と診断された方に薬が処方されることがあります。
これはつらい膝の痛みを抑えるためのものです。また、薬の中には炎症を抑える働きをするものもあります。
鎮痛剤を服用しても症状は進行する
一方で、痛みを抑えるための薬を服用しても、症状は進行を続けます。
変形性膝関節症は筋力低下など何らかの要因によって膝に負担がかかり、軟骨のすり減りが進行する疾患です。そのため、膝の痛みは症状の一つであり、薬を服用したことで痛みを感じないからと言って、膝の軟骨のすり減りが止まるとは言い切れません。
そのため、薬で痛みが引いたからといって、変形性膝関節症が完治するとは言い切れません。
変形性膝関節症で処方される薬
変形性膝関節症の痛みを抑えるための薬の種類
変形性膝関節症で処方される薬は内服薬、外用薬、注射薬に分けられます。
それぞれ、変形性膝関節症で処方される薬をご紹介します。
全ての薬には効果が期待できるとともに、リスクが伴います。用法用量を守って、適切な処方の元、服用してください。
変形性膝関節症で処方される主な内服薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
変形性膝関節症でよく処方されるのが、非ステロイド性抗炎症薬です。非ステロイド性抗炎症薬は鎮痛効果や抗炎症作用が期待されます。
よく知られているところでは「ロキソニン」「ボルタレン」などの商品名で流通しており、他の疾患で処方されたことのある方も多いのではないでしょうか。
注意すべき点として、非ステロイド性抗炎症薬では胃腸障害や消化管潰瘍、気管支炎、腎障害などの副作用が見られることが挙げられます。
胃腸障害が発生しにくいもの、しやすいものがあり、場合によっては胃の粘膜を保護するための薬を一緒に飲む必要があります。薬については、必ずかかりつけの医院や薬局にご相談ください。
アセトアミノフェン
鎮痛効果が期待されます。こちらは非ステロイド性抗炎症薬と異なり、抗炎症作用は期待できません。
「アンビバ」「カロナール」といった商品名で流通しており、こちらも広く普及している薬です。
妊娠中などでも服用できるため、比較的安全性が高いと考えられています。
副作用としては、肝障害、食欲不振、消化器症状が挙げられます。どのような薬であっても全く副作用がないとは言い切れないのです。
鎮痛薬は痛みを感じる時に、指示された量を守って服用しましょう。
COX-2阻害薬
COX-2阻害薬は、非ステロイド性抗炎症薬の一種で、鎮痛効果が期待されます。
従来型の非ステロイド性抗炎症薬と比較して胃腸障害などの副作用が生じにくいものとして知られています。
変形施膝関節症やリウマチなど、服薬期間が長期にわたる疾患の場合に、副作用の対策として処方されることがあります。
従来型の非ステロイド性抗炎症薬と比較すると、鎮痛効果が弱いと感じられる方もいるようです。
オピオイド鎮痛薬
非ステロイド性抗炎症薬の効き目が見られない時に処方される薬で、強い鎮痛作用があり、医療用麻薬に分類されます。
副作用として便秘、吐き気、めまい、眠気などが挙げられます。
デュロキセチン
抗うつ薬として知られていますが、ノルアドレナリンに働くことで、痛みを抑制する効果があることが知られています。
2016年から変形性膝関節症による疼痛にも処方されるようになりました。
副作用として胃腸障害や口の渇きや便秘、排尿障害、性機能障害などが報告されています。
変形性膝関節症で処方される主な注射薬
ヒアルロン酸
膝に効果を発揮するとして知られているヒアルロン酸は注射薬に分類されます。
ヒアルロン酸は関節の保護、鎮痛作用が期待されます。
重大な副作用は多くないようですが、過敏症・蕁麻疹・発疹・そう痒感・浮腫、投与関節疼痛、一過性投与関節疼痛、投与関節腫脹が現れる場合があります。
関節内が原因の痛みに効果を発揮しますが、変形性膝関節症の場合、筋肉や筋膜、脂肪体、腱、靱帯など、関節外に痛みの原因があることもあります。そのため、注射しても効果が見られない場合もあります。
ステロイド
ヒアルロン酸と並んで知られている注射薬としてステロイド製剤があります。鎮痛効果、抗炎効果が期待されます。
こちらはヒアルロン酸と比較して、即効性が期待できますが、持続性は劣ると考えられています。
副作用として軟骨が脆くなることや感染しやすくなることが知られています。
薬を使った変形性膝関節症の治療の注意点
医師の指示に従って正しく薬を使用しましょう
全ての薬は効果が期待できる反面、副作用も存在します。
多くの場合、過剰に恐れる必要はありませんが、指示を守って服用するようにしましょう。
不安な場合は、かかりつけの医院や薬局に相談してください。
変形性膝関節症の薬物療法について
薬物療法は、主として痛みを抑えることを目的に実施されます。
しかし、変形性膝関節症は炎症を抑えたとしても、軟骨のすり減りの進行が止まるわけではありません。そのため、薬物療法を続けていても、痛みを再発する可能性が伴います。
薬物療法と併せて、運動療法を実施する必要があります。
運動療法やリハビリについては詳しく解説した記事があるのでぜひご一読ください。
変形性膝関節症では新たな治療方法として再生医療、及びそれに準じる治療が近年注目されています。薬物療法を長く続けられている方や、手術に抵抗がある方はぜひ一度ご検討ください。
変形性膝関節症の新しい治療
再生医療及びそれに準じる治療
近年では、自己由来の成分を主として、膝の組織の再生に働きかける再生医療及びそれに準じる治療も選べるようになりました。
再生医療では、患者様自身の血液や脂肪から採取した細胞から、傷ついた組織の再生に働きかける成分を抽出して注射を行います。
これらの治療の最大のメリットは、手術や入院が不要で変形性膝関節症の進行の抑制を期待できる点です。一般的な注射に見られるリスクは伴うものの、比較的安全性の高い治療だと当院では考えています。
詳しく解説したページも併せてご覧ください。
まとめ
変形性膝関節症の薬物療法について解説しました。
薬物療法についてさらに詳しく知りたい方はかかりつけの整形外科にご確認ください。
また、再生医療に関わるものや、変形性膝関節症の治療方法、リハビリや運動療法については当院でも相談を受け付けておりますので、無料の電話相談をご活用ください。