変形性膝関節症と肥満には深い関係があります。
今回は変形性膝関節症と肥満の関係性と、なぜ変形性膝関節症に対して運動が大切かを解説していきます。
目次
二足方向である人間はひざを痛めやすい
ひざ関節は太ももの骨(大腿骨=だいたいこつ)とすねの骨(脛骨=けいこつ)をつなぐ関節であり、「立つ、座る、歩く」など人間の基本的な動作に重要な働きをしています。しかし、長年にわたって重い体重を支えながら曲げ伸ばしを繰り返すことで、膝にはどうしても負荷がかかってしまうのです。
特に二足歩行である人間は、立っているだけでも身体を安定させるためにひざ関節の周囲の筋肉が引き合い、大きな負荷がかかります。さらに、歩いている時は体重の2〜4倍、階段の上り下りでは体重の6〜7倍の負荷がかかるといわれています。
肥満に注意!体重のたった数kgが大きな違いに
そんな日常生活を送る上で体重以上の負荷がかかるひざ関節なので、体重が1kg増えただけでも、膝にはその数倍の負荷がかかることになります。
変形性膝関節症は肥満によって引き起こされる?
3kg体重が増加した場合は膝への負担が21kg分程度増加してしまいます。
一方で減量したならその分だけ膝への負担を減らせることになります。例えば、体重が3kg減少すると膝への負担は21kg分少なくなります。
そのため肥満は変形性膝関節症の原因の一つであり、体重を減らすことは膝痛への治療の一つと言えるのです。
まずは体重を減らすために、運動をはじめてみましょう。
膝関節の痛みが強く、運動が難しい方の減量の方法
膝が痛い方は運動療法だけで体重を減らすことは困難になります。痛みで運動が億劫になってしまうからです。
そのような場合、まずは食事を見直し、減量をすることが第一の選択となります。
筋力不足で変形性膝関節症が進行してしまう
変形性膝関節症が進行する理由に加齢や運動不足に伴う筋力低下があります。これは筋肉が弱くなると膝を安定して支えることが出来なくなるためです。そのため膝関節の骨への負荷が増し、さらには関節軟骨にもダメージを与えてしまいます。
ひざが痛い時は一時的な安静は大事です。しかし筋力の低下と膝の痛みには注意すべき「負のスパイラル(悪循環)」が存在します。
変形性膝関節症の負のスパイラル
①変形性膝関節症の症状が進み、関節を動かすたびに痛みが走る
⇨②痛みがあるため患者さんは極力膝を使わないように行動するようになる
⇨③動かないことにより運動量自体が減り、膝のまわりや脚の筋力が低下する
⇨膝の不安定の進行から、再度①へ
このように痛みに対する安静によりさらに膝関節が不安定さが増し、関節軟骨がすり減る悪循環が起こってしまうのです。この負のスパイラルを断ち切るには、可能な範囲内で膝まわりの筋肉を鍛えることが欠かせません。
適性な体重を確かめるためには?
上記でも説明した通り、体重が重い人はまずは食事制限による減量が欠かせません。体重が重いままでの運動はより膝への負担をかけてしまうからです。気になる方はBMI(Body Mass index)を参考にしてみると良いでしょう。
肥満度を表すBMIとは
BMI(Body Mass Index)はボディマス指数と呼ばれ、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数です。子供には別の指数が存在しますが、成人ではBMIが国際的な指標として用いられています。
年齢や元々の体型・筋肉量にも左右されますので、参考値として考える必要があります。しかし健康を維持するためは日頃からBMIを把握することが重要です。
計算式
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
適正体重 = (身長m)2 ×22
判定基準BMIの計算式は世界共通ですが、肥満の判定基準は国により異なります。
例えば160cmで体重55kgの方の場合、55÷1.6^2でBMIは21.48となります。BMIを計算できるサイトもありますので検索してみましょう。
成人の場合
日本肥満学会の判定基準 | |
BMI値 | 判定 |
18.5未満 | 低体重(痩せ型) |
18.5〜25未満 | 普通体重 |
25〜30未満 | 肥満(1度) |
30〜35未満 | 肥満(2度) |
35〜40未満 | 肥満(3度) |
40以上 | 肥満(4度) |
世界保健機関(WHO)の判定基準 | |
BMI値 | 判定 |
16未満 | 痩せすぎ |
16.00〜16.99以下 | 痩せ |
17.00〜18.49以下 | 痩せぎみ |
18.50〜24.99以下 | 普通体重 |
25.00〜29.99以下 | 前肥満 |
30.00〜34.99以下 | 肥満(1度) |
35.00〜39.99以下 | 肥満(2度) |
40.00以上 | 肥満(3度) |
体重が普通体重に該当する方で、初期〜進行期の変形性膝関節症と診断された場合は、なるべく筋力を上げる運動を心がけましょう。
これはストレッチなどと一緒に行うと筋肉のこわばりも防げるので有効です。
変形性膝関節症の方に適切な運動とは?
軽度の痛み程度であれば、ウォーキングやヨガといった負荷の少ない運動をおすすめします。
一方で、痛みが強いようなら水中でのウォーキングや自転車漕ぎ、椅子の上での筋肉トレーニングで負荷をさらに減らす工夫が必要です。
痛い時に長時間激しい運動をするなどの無理は禁物です。膝の軟骨や関節のすり減りを進行させてしまうことがあります。
強い痛みや腫れがある人は医師や理学療法士に相談し、膝に負担をかけすぎないトレーニングを教わってください。
膝は生活を送る上で欠かせない関節ですから、ハツラツとした毎日を送るには、日頃からのひざケアが大切です。適切な運動と肥満解消、そして前触れを感じたら早めに治療することが変形性膝関節症の進行リスクを遠ざけるカギとなるでしょう。