手首が痛い原因と考えられる病気を紹介します。痛みの一時的な対策方法や、受診の目安も合わせて解説します。
足首の痛みを伴う疾患の場合、原因は転倒などで衝撃が加わったもの、使いすぎによるもの、生活習慣によるものなど多岐に渡ります。
本記事の内容は診断ではなく情報提供です。患部の状況や原因は個別に異なるため、整形外科医の診断を受けることをお勧めします。
目次
手首の使いすぎ:狭窄性腱鞘炎
腱鞘炎は、骨と筋肉をつなぐ腱が、何らかの炎症によって、腱鞘をスムーズに通れなくなった場合に生じます。
腱鞘炎の中でも、親指を伸ばす伸筋腱が狭窄され、手首の親指側が痛む「ドゥ・ケルバン病」や、指を曲げる屈筋腱に炎症が生じ手のひらの指の付け根に痛みを感じる「ばね指」がよく知られています。
手首の親指側が痛む:ドゥ・ケルバン病
ドゥ・ケルバン病の原因
手首には手を動かすための筋肉や腱がいくつもあります。その内、親指を曲げる働きをする腱が「長母指外転筋腱」と「短母指伸筋腱」です。この2つの腱が靭帯性腱鞘に包まれる形になっています。
手首の使いすぎなどによって、この部分に炎症が生じた状態がドゥ・ケルバン病です。
主に使いすぎが原因であるため、ドゥ・ケルバン病は手を酷使するスポーツや仕事をされている方に多く見られます。
また、女性の場合、更年期や妊娠・出産などによってホルモンバランスに変化が現れると、血行不良により腱鞘が狭窄することがあります。そのため、これらがきっかけで発症することがあります。
ドゥ・ケルバン病の治療
基本的に湿布や塗り薬、温熱などで炎症を抑える保存療法が選ばれます。使いすぎが原因でもあるので、安静にする必要があります。
また、これらの方法で効果が十分に見られない場合、ステロイドや局所麻酔などの注射を行う場合もあります。
保存療法で効果が見られない場合は、手術が選択されることもあります。局所麻酔を行なった上で、靭帯性腱鞘を切開することで腱を解放する手術を行います。その後、リハビリテーションで機能の回復を図ります。
手のひらの指の付け根が痛む:ばね指
手のひらの指の付け根が痛む場合や、曲がった指をまっすぐにしようとするとばねのように跳ねる(ばね現象)症状がある場合はばね指が疑われます。
ばね指の原因
ばね指の原因もドゥ・ケルバン病と同様に、指の使いすぎによるものが多いです。
キーボードやマウスの操作、ゴルフやテニスなどのスポーツ、ピアノなどの楽器演奏、食器洗いなど家事によって手を使いすぎたケースなどが挙げられます。
また、ドゥ・ケルバン病と同様、更年期や妊娠・出産などの際に、女性に発症しやすいことも知られています。
ばね指の治療
ばね指の治療も湿布や塗り薬、温熱などで炎症を抑える保存療法が選ばれます。
また、原因が使いすぎの場合が多いため、スポーツや日常の手を使用する動作を避け、安静にする必要があります。
保存療法で効果が見られず、頻繁に再発する場合は手術をお勧めされることもあります。
手をついて転倒した:橈骨遠位端骨折
手をついて転倒した場合に手首の骨を骨折してしまうことがあります。
通常、骨折した場合には強い痛みが伴いますが、骨折の程度が軽微な場合は、捻挫のような痛みを感じる場合もあります。
橈骨以外の骨が骨折しているケースや骨折していても痛みの弱い場合もあるため、手をついて転倒し、痛みを感じる場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
橈骨遠位端骨折の原因
手をついて転倒したケースなど、手首に強い力が加わったことが原因として挙げられます。
橈骨遠位端骨折の治療
骨折した場合、まずは骨を正常な位置に戻す整復が行われます。その後、添木やギプスを利用して骨がずれないように固定します。その後リハビリテーションを行います。
骨が粉砕するように骨折してしまった場合や、骨のズレが大きい場合は手術が選ばれることもあります。
橈骨遠位端骨折で注意したいこと
橈骨遠位端骨折は、骨の量が減って骨の強度が下がり、骨折しやすくなる骨粗鬆症による脆弱性骨折として初期に現れることが多いと考えられています。
合わせて検査を行いましょう。
しこりがある:ガングリオン
若い女性に現れやすい手首の痛みとしてガングリオンが挙げられます。
ガングリオンは多くの場合、無症状であるケースが多いのですが、神経の圧迫が生じて、痺れを感じたり、痛み、手首が動かしにくいなどの症状が現れる場合があります。
ガングリオンの原因
ガングリオンの正体は良性腫瘤です。関節の付近にゼリー状の物質が詰まった袋状の腫瘤ができる疾患です。
ガングリオンが生じる理由は明確にはわかっていませんが、関節内にある滑液が袋の内部に詰まることで濃縮され、ゼリー状になると考えられています。
手の使いすぎなどとの関連性は明らかになっていません。
ガングリオンの治療
ガングリオンは良性腫瘤と考えられており、症状が現れない場合は放置していても問題ありませんが、他の重篤な疾患でないことを確認するためにも整形外科の受診をお勧めします。
痛みを生じる場合や、大きくなり続ける場合は、注射器などを使用して吸い出す治療が行われます。
再発を繰り返す場合などは手術で摘出する場合もあります。
蓋を開ける時など動作時に痛む:母指CM関節症
母指CM関節は親指と手首の間にある小さな関節で、物を掴んだり、蓋を回したり、手を使う様々な動作で活躍しています。
この母指CM関節の軟骨がすり減り痛みを感じる疾患が母指CM関節症です。膝関節や股関節でも現れる変形性関節症の一種で、使いすぎや加齢などによって発症します。
初期段階では、瓶の蓋を開ける時や、ドアノブを回す時など、親指で挟むような動きをした時にピリッとした痛みを感じることが多いようです。
進行すると関節の腫れが強くなり、親指が開きにくくなったり、親指の付け根に変形が現れることがあります。
母指CM関節症について詳しく紹介した記事もあるのでご参照ください。
母指CM関節症の原因
加齢や使いすぎなどの要因によって軟骨がすり減ることによるものです。
母指CM関節は日常生活でも多く使用するため、負荷が大きい関節といえます。繰り返す負荷によって関節部分の軟骨がすり減り、関節の周辺に炎症が起きることで痛みが生じます。
母指CM関節症の治療
母指CM関節症の治療では、鎮痛剤を含む貼り薬や、関節の負荷を減らす軟性装具を用いたり、包帯で固定したりする保存療法が選ばれます。また、痛みが強い場合や装具で効果が見られない場合、痛み止めの薬を飲んだり、関節内に注射したりします。
痛みが強く、変形が大きい場合は手術が選ばれることもあります。
再生医療及びそれに準じる治療
近年では、母指CM関節症の治療に、自己由来の成分で回復力を高めるPRP-FD治療が用いられることがあります。
手術を避けたい場合や、保存療法を継続しても効果が薄い場合などにお勧めする治療です。
PRP-FD治療についてはこちらの記事もご覧ください。
重篤な疾患でないことを確認するためにもまずは整形外科へ
他にも考えられる疾患はありますが、手首の痛みを感じる場合、まずは重篤な疾患でないことを確認するためにも整形外科を受診するようにしましょう。
また、転倒など、強い衝撃を受けた場合は骨折の可能性もあるため、早めに受診するようにしましょう。
また、手首の関節は複数の骨や軟骨、腱、筋肉からなり、レントゲンだけでは疾患が特定できない場合もあります。より詳細に手首の柔らかい組織まで確認できるMRIの撮影をすることで疾患を特定できる場合もあります。