膝に引っ掛かりを感じ、動かしにくくなる症状をロッキングといいます。ロッキングが見られる場合に考えられる疾患と対処方法を整形外科医が解説します。
目次
膝のロッキングとは
ロッキングとはどのような症状?
突然膝が動かなくなってしまう現象を膝のロッキングといいます。しばしば激しい痛みを伴い、歩くことが困難になります。
膝の関節内にある骨や軟骨の欠片や半月板組織などの浮遊物が、関節の隙間に挟まった時に生じます。
膝のロッキングの原因
ロッキングは骨や軟骨の欠片や半月板組織などの浮遊物が、関節の隙間に挟まることが原因です。これを引き起こす以下のような疾患によるものと考えられています。
半月板損傷
半月板は、膝の関節の中で、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(脛の骨)の間にあります。アルファベットのCのような形をした軟骨です。半月板は体重の負荷を分散させたり、関節の位置を安定させる役割をしています。
外からの衝撃などが原因で、半月板が損傷してしまうことがあります。
損傷した半月板組織が関節に挟まった場合にロッキングが生じます。
若い世代では、外傷が加わりやすいスポーツをしている人に多く見られます。外傷が原因の場合、前十字靭帯の損傷などを伴っていることがあります。
また、40代以上の方の場合、加齢によって半月板が脆くなっており、蓄積された負荷によって損傷が生じる場合があります。
半月板損傷は変形性膝関節症の要因になることが知られています。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は加齢などによって膝の軟骨がすり減ることで膝に痛みを感じる疾患です。初期では、歩き始める時などに痛みを感じ、症状の進行に伴って慢性的に痛みを感じるようになります。末期では膝の変形が進行し、外から見てもわかるほどに膝の変形が進行します。
変形性膝関節症では欠けた軟骨や半月板が挟まることでロッキングが生じます。
変形性膝関節症は、女性、高齢、肥満傾向の人に多く見られる疾患で、膝の痛みを伴う病気としては罹患者数が多いことが知られています。
放置することで、歩行が困難になり介護が必要な要因になることも知られています。
変形性膝関節症についてはこちらの記事もご一読ください。
離断性骨軟骨炎
関節の中に軟骨が剥がれ落ちてしまう疾患で、10代に多いことが知られています。
スポーツなどの外傷によって軟骨の下の骨に負荷がかかることが原因として考えられています。
剥がれ落ちた軟骨の欠片が挟まることでロッキングが生じます。
膝のロッキングの診断
外傷による疾患が原因のロッキングの場合は、他の疾患を併発している場合もあります。
また、加齢によるダメージの蓄積が原因の場合でも、放置しておくと長期的に介護が必要になるなど、症状が進行する可能性があります。
ロッキングの症状が見られる場合、まずはかかりつけの整形外科を受診しましょう。
MRIやCTでの診断
膝の疾患では整形外科でMRIやCTの撮影を勧められることがあります。
膝の組織は骨や軟骨、筋肉などが複雑に絡んでいるため、通常のレントゲンのみでは正確に診断できない場合があるからです。
軟部組織やレントゲンで見えにくい関節の間などの評価が必要と判断される場合はMRIやCTの撮影を行いましょう。
膝のロッキングを改善するためには
保存療法
軽度の場合に検討される治療方法は保存療法です。
保存療法には薬物療法、運動療法、装具療法などに分けられます。薬物療法ではヒアルロン酸の注入、鎮痛剤の投与がメインになります。
それぞれ解説した記事がありますので、そちらも参照してみてください。
保存療法は、治療期間が長くなりますが手術をしなくてもいいというメリットがあります。
手術療法
半月板が大きく損傷している場合、検討される治療法が手術療法です。
手術には大きく分けると切除術と縫合術の2種類があります。
昔は術後の疼痛の改善が早いことから切除術がメインで選択されていました。しかし、長期の研究で半月板を切除してしまうと、その後変形性膝関節症が進行するリスクが高いことがわかってきました。
そのため今では積極的に選択されることはなくなりました。
現在では出来る限り半月板を温存するために、縫合術を選択されることが多いです。
縫合術では術後の安静期間などもありますが、半月板を出来るだけ正常の形に近い状態で残すことができます。そのため疼痛を減らしたりスポーツ復帰をすることができる可能性があります。
半月板縫合術
傷ついた半月板を縫合する手術です。
半月板の機能を維持するため、将来的な変形性膝関節症のリスクを低下させることができます。また、スポーツへの復帰も可能です。
後述する半月板切除術と比較して、歩けるまで回復するまでに期間を要することがあります。
半月板切除術
傷ついた半月板を切除する手術です。
半月板縫合術と比べると、歩けるようになるまでの回復期間が短くなることが知られています。
一方で、膝の安定を保つ役割をする半月板を切除してしまうことで膝への負荷が増してしまい、変形性膝関節症のリスクが高まります。
そのため、歩けるまでに回復した後も、運動療法を継続し、膝の負担を減らす工夫をする必要があります。
再生医療
再生医療は、血液や脂肪から採取した自己由来の成分を注入することで、損傷した組織の回復を促す治療です。手術や入院が不要で、身体の負担が少ないことがメリットになります。
再生医療には血液から血小板に含まれる回復を促す成分を抽出して注入するPRP-FD療法、脂肪から採取した幹細胞を注入する脂肪幹細胞治療などがあります。
ロッキングを起こすほどの半月板断裂が元通りになる確証はありませんが、保存療法で効果がみられず、手術は避けたい方に検討いただきたい治療になります。
膝のロッキングが見られたらかかりつけの整形外科へ
膝に引っ掛かり感を感じたら、まずは整形外科を受診しましょう。
再生医療を検討される場合は、ぜひ当院の無料電話相談をご活用ください。見込まれる効果や費用などご案内いたします。