膝に水が溜まると、膝全体が腫れぼったく重苦しい感じになります。
また、さらに水の量が増えてくると、膝の曲げ伸ばしが不自由になります。
関節内に水が溜まる状態を「関節水腫」といいます。
膝に腫れたことを自覚して病院に行くと、医師が関節水腫を確認して「水がたまっているから抜きましょう」ということがあります。
実際、膝に溜まった水はどうするのが良いのでしょうか?
今回は、関節水腫について考えてみたいと思います。
目次
膝に水が溜まることは異常なの?
関節内は普段から関節液が存在している
関節全体は関節包という一つの袋に包まれており、関節の内部は関節腔といいます。関節くうは元々とろみのある水(関節液)が入っています。
関節液は通常、淡黄色透明で粘調性です。その役割として関節の動きを円滑にすること、関節軟骨に栄養を供給することがあります。その量は通常およそ1〜3㏄程度とされています。
なぜ膝の関節に水が溜まるの?
原因は膝の関節内の炎症
関節水腫は特に膝関節に多く、変形性膝関節症などに伴う滑膜の炎症[1]や、半月板や靭帯損傷時に水が溜まる現象がみられます。この他、リウマチや痛風、感染によっても水が溜まることがあります。
関節内に炎症が生じると、滑膜の毛細血管の透過性が亢進することで関節液が増加します(多いときには50㏄以上にも)
関節液の量を調節するのは滑膜です。滑膜は、新しい関節液を作って分泌すると同時に、古い関節液を回収する働きを担っています。なんらかの理由でこの新陳代謝のバランスが崩れ、関節液の回収が追いつかなくなった時、膝に水が溜まります。これが「水が溜まっている」状態となります。
膝に溜まる水は抜いた方がいいの?
膝の動きの制限が強い場合、水を抜いた方が良い
しばしば「膝の水を抜くとクセになる」ということが言われますが、クセになるというのは一部誤解があります。関節水腫は関節内の炎症等が原因です。そのため、抜いた後も炎症が残っていれば再度水が溜まることになります。
水を抜くことのメリットは、膝関節の筋力低下を抑えることができることにあります。
デメリットとしては、膝の水を抜くことで、一時的にある程度痛みが緩和することがあるため、無理をしてしまうことで炎症を悪化してしまうことが挙げられます。
膝に水が溜まっていることで、身体内に起こることとして、膝関節の筋力低下(大腿四頭筋)があります。これは、「関節原生筋抑制Arthrogenic muscle inhibition」と呼ばれる反応[2]です。筋肉を動かす神経の反応が抑制されることで、筋力低下が生じるものです。
この状態でトレーニングをしても膝関節自体が不安定なため悪化してしまうリスクがあります。そのため、膝関節の動きの制限が強い場合は、筋力低下を抑えるためにも水を抜くことは推奨されます。
一方で、水を抜くのは関節水腫の根本的な治療ではありません。一時的に症状が治ったからと言ってすぐに無理な生活を続けると、症状が悪化する場合があります。また安静でも炎症が治まらない場合は、治療として関節内注射や理学療法等が必要となります。
そのため、膝の腫れがある場合は、関節内に問題が生じている可能性がありますので、一度早めに受診していただくことをお勧めします。
膝に水が溜まっていないか自分で確認する方法
膝に水が溜まっているか、ご自身で確認することができます
膝全体が腫れぼったく重苦しい感じや曲げ伸ばしづらさやを感じたら、水が溜まっているかどうかセルフチェックしてみてください。
膝に溜まる水のセルフチェックのやり方
1.まず膝を伸ばして床に座り、片方の手で膝の少し上を膝のお皿の方に向かって押さえます。
2.次に、もう片方の手でお皿の骨を軽く押します。
もし水が溜まっていれば、お皿の骨が浮くような感覚があります。これを膝蓋跳動といいます。
膝に溜まる水を抜いた場合、水の色も大切
病院で関節の水を抜いてもらった時に「今日はどれくらいの量抜けたか?」は気にされる方も多いと思います。量だけではなく、抜いた水の色も実はとても大切です。
上記に書いたように関節液は、通常は黄色く透明です。
しかし、炎症・感染・靭帯が切れるなどによって、水の色が変わってきます。
抜いた水の色 | 考えられる原因 |
褐色・赤色 | 骨折、半月板損傷、靭帯損傷などの外傷 |
白濁色 | 感染症、痛風 |
濃い黄色で透明 | 変形性膝関節症、軟骨損傷 |
色の違いによっても、医師が診断をする上で、これだけ分かれてきます。
医師は、症状や話を聞いた内容を元に膝の状態を確認します。その上で、水を抜いた色や量などを含めて、膝の状態を考え治療方針を考えます。
水を抜くと言うことは、検査の一種でもあり治療の一種でもあります。
1 . Yuan G H et al.Immunologib intervention in the pathogenesis of osteoarthritis.Arthritis & Rheumatism.Vol.48,No.3,March 2003,pp602-611
2.rice D A et al.Quadriceps arthrogenic muscle inhibition neural mechanisms and treatment perspectives.Seminars in Arthritis and Rheumatism.Volume 40, Issue 3, December 2010, Pages 250-266