足首が痛い原因と考えられる病気を紹介します。痛みの一時的な対策方法や、受診の目安も合わせて解説します。
足首の痛みを伴う疾患の場合、原因は外から衝撃が加わったもの、使いすぎによるもの、生活習慣によるものなど多岐に渡ります。
本記事の内容は診断ではなく情報提供です。患部の状況や原因は個別に異なるため、整形外科医の診断を受けることをお勧めします。
目次
外から衝撃が加わった時に考えられる疾患:足関節捻挫/足関節靭帯損傷
足首をひねるような動きをした時、靭帯が伸びすぎることで、損傷を受けることがあります。
よくある例として、凸凹した地面を歩いているときに、足首を内側に捻ってしまうことなどがあります。これを内反といいます。
捻挫の症状
主な症状は、
- 足首が腫れる
- 歩くと痛みを感じる
- 青あざができる
などです。
捻挫の重症度
足首は、足の土台の役割をする距骨、すねの外側にある腓骨、すねの太い骨の脛骨からなっており、どの靭帯がどの程度損傷を受けたかによって程度に差がでます。
靭帯が伸びて損傷した場合は軽度、部分的に靭帯に断裂が見られる場合は中度、完全に断裂している場合は非常に重度となります。
日常生活の中で発生した捻挫の場合は、軽度のケースが多いですが、無理は禁物です。
捻挫の応急処置
捻挫の際に役立つ応急処置としてRICEがあります。
これは4つの頭文字をとったもので、RはRest(安静にする)、IはIceing(冷やす)、CはCompression(圧迫する)、EはElevation(高くする)の略です。
安静にする
安静にするとありますが、横になるという意味ではありません。
まずはむやみに動かさない姿勢をとり、捻挫した患部を固定します。固定する時は足首が直角になるようにしましょう。
冷やす
氷嚢や冷水などを使って、捻挫した部分が熱を持たないように冷やしましょう。
適度に冷やすことで毛細血管を収縮させて炎症や内出血を抑えます。
冷やしすぎてもよくありませんので、皮膚が冷たくなってきたら一度中断し、何度か繰り返します。
圧迫する
包帯、テープなどで足首を固定することで、安定させます。
腫れや内出血を最小化することが期待できます。
過剰に締め付けすぎると、血流障害や神経障害が生じることがあるので、変色や痺れを感じたら緩めましょう。
高くする
足首を心臓よりも高い位置にすることで、内出血による腫れを抑えることが期待できます。
受診の目安
- 足首の腫れがひどく歩くことが難しい
- 腫れや痛みが数日経っても引かない
- 過去に同じ場所を何度も捻挫している
などの場合、重篤な捻挫であることや、後述の第5中足骨基部骨折など、他の疾患の可能性も考えられますので、整形外科の受診を強くお勧めします。
また、該当しない場合でも、整形外科の受診をすることで適切な処置を受けられます。
足を挫いて、痛みで足をついて歩くことが困難:第5中足骨基部骨折
足を挫いた経験があると思いますが、併せて骨折してしまう第5中足骨基部骨折もよく見られます。
下駄を履いていて、挫いてしまった時に生じることが多かったため「下駄履き骨折」とも呼ばれています。
捻挫と同様、足を捻るような力が加わった時に骨折してしまうケースで、日常的な動作の中で生じるため、実際の症例も多くあります。
また、第5中足骨は、走るスポーツなどで繰り返し負荷を受けることで疲労骨折を起こす場合もあり、この場合は「ジョーンズ骨折」と呼ばれています。
第5中足骨基部骨折の症状
足の外側に強い痛みを感じ、足をついて歩くことが困難になります。内出血を伴い、腫れが現れます。
疲労骨折の場合は、初期では痛みは軽度の場合もありますが、スポーツなどを繰り返すことで、徐々に痛みが強まります。
第5中足骨基部骨折の治療
3〜4週間ほどギプスで固定することで治療を行います。
骨折により、本来の位置からの骨のズレの発生が多い場合、手術が必要になります。また、疲労骨折の場合も早期に治療できなかった場合は手術が必要になる場合があります。
また、スポーツ選手の方など、特殊な事情で早くスポーツに復帰したい場合も手術を行うことがあります。
受診の目安
足をついて歩くのが困難なほど痛みを感じる場合は、すぐに整形外科を受診しましょう。
また、捻挫と思っていても骨折であるケースもあるため、足を挫いて痛みが持続する場合は早めに整形外科を受診することをお勧めします。
外から衝撃が加わり、痛みで足をついて歩くことが困難:足関節果部骨折(脱臼骨折)
跳躍や高所からの着地などによって足に衝撃が加わった場合、足関節周辺の骨を骨折することがあります。強い衝撃が加わっているため、骨折のみではなく、他の筋肉や靭帯、神経などに損傷を伴っている場合もあります。
足関節果部骨折の症状
骨折の状態によっても異なりますが、足関節の腫れ、皮下出血、関節が外側に曲がってしまう外反変形や内側に曲がってしまう内反変形が見られることがあります。
足をついて歩くことが困難になります。
足関節果部骨折の治療方法
骨折時の骨のズレが少なく、正しい状態で固定できる場合は保存療法で治療します。
正しい状態で固定することが難しい場合には関節内骨折となり、手術が必要になります。
受診の目安
歩くことが困難な場合は、どのような疾患であっても整形外科を受診されることを強くお勧めします。
診断にはレントゲン撮影や、粉砕が多い場合はCTの撮影を勧められることがあります。骨折の状態を正しく把握するためにも必ず受診しましょう。
歩きはじめに足首の痛みを感じる:変形性足関節症
変形性足関節症は、脛骨と距骨の間にある軟骨がすり減ることで、腫れや痛みを生じる疾患です。
頻繁に捻挫を繰り返していた人や、足首を骨折したことのある人に多く見られます。一方で、関節炎や細菌感染などが原因となる場合もあり、明確な原因に心当たりがなくとも発症しているケースもあります。
変形性足関節症は軟骨がすり減る疾患ですが、すり減った軟骨が自力で回復することは極めて稀です。そのため、自然治癒が見込めず、症状が進行し続けてしまいます。
変形性足関節症の症状
初期では歩行を始める時に痛みを感じることが多いですが、症状が進行すると常に痛みを感じるようになることもあります。
変形性足関節症の治療
軽度の場合では、足底板(インソール)を用いて足の外側を持ち上げたり、足首のサポーターを用いて足首を固定する保存療法が選ばれます。
症状が進行した場合、手術療法を選択することもあります。手術では、脛骨の下部を切って関節の傾きを矯正する下位脛骨骨切り術や、人工関節に置き換える人工関節置換術などの方法があります。
また、近年では自己再生を促す再生医療も注目されています。
変形性足関節症の受診の目安
変形性足関節症の初期段階では、歩き始めに痛みを感じることが多いです。該当する症状が現れた際には整形外科を受診しましょう。
変形性足関節症では直接の要因がわからないこともあります。正確な診断のためにCTやMRIの撮影を行うことをお勧めされる場合がありますが、放置し続けた場合、自力で歩けなくなってしまう可能性もあるため、一度撮影されることをお勧めします。
アキレス腱のあたりに軽い痛みを感じる:アキレス腱炎
スポーツをする機会が多い人に見られる足首の疾患としてアキレス腱炎があります。
アキレス腱に走る、飛ぶ、蹴るなど、何らかの原因で損傷があった場合に炎症を生じ、痛みを感じます。
アキレス腱炎の症状
軽度の場合、アキレス腱のあたりに軽い痛みを感じることがあります。また、走っている時に痛みを感じるケースが多いようです。
また、アキレス腱の周囲を押したり、つまんだりすることで痛みを感じます。
起床時に強張りや硬さを感じる場合があり、しばらく活動すると治る、といった症状が伴う場合もあります。
アキレス腱炎の治療
多くの場合は、スポーツなどを中断して安静にし、ストレッチを行うことで回復します。また、医療機関を受診することで、痛み止めなどを処方してもらうことも可能です。
一方で、難治性のアキレス腱炎も存在しています。医療機関を受診して服薬していても回復が見られない場合は運動器カテーテル治療が行われることもあります。
アキレス腱炎の受診の目安
安静にしているのにも関わらず数日以上痛みを感じるようであれば整形外科の受診をお勧めします。
一時的に足首に激しい痛みを感じ、しばらくすると治る:痛風
足の親指の付け根に痛みを感じることが多い痛風ですが、足首の関節部分、膝関節、手関節、肩関節に痛みを発する場合もあります。
健康診断の結果で尿酸値が高いことを指摘される場合、注意が必要です。
痛風の症状
痛風は、文字通り「風が吹いても痛い」疾患で、発作的に耐え難い痛み(痛風発作)を伴いますが、しばらくするとおさまります。痛風発作を何度か繰り返すうちに悪化し、関節の腫れが進行したり、痛風腎や、腎臓結石、尿管結石を併発する場合があります。
痛風の治療
痛風の原因は肉やビールなどに多く含まれるプリン体の摂りすぎや排泄不全によって、尿酸という物質が体内に過剰になってしまうことにあります。
血液に溶けきれないほど尿酸が増えると、関節内に尿酸塩の結晶が生じます。この結晶を白血球が処理するときに激しい痛みを伴います。
痛風の治療では、痛風発作治療薬で痛みを取り除きます。その後、原因となっている尿酸値を下げる薬を用います。服薬とともに、根本的な原因となる生活習慣の改善に取り組むこととなります。
痛風の受診の目安
痛風が疑われる場合、整形外科、内科などで検査が可能です。一時的に痛みが治ったとしても激しい痛みを繰り返してしまいます。早めに受診しましょう。
まとめ
足首の痛みを感じた場合は整形外科を受診しましょう。
「捻挫だと思っていたら実は骨折していた」というケースもあります。
痛みを感じた時の状況や、スポーツや仕事などで受傷した経験などを伝えられるようにしておくと診断に役立ちます。他に飲んでいる薬も合わせて伝えられるようにしましょう。