「膝痛にはグルコサミンやコンドロイチン」こんなフレーズをCMや通販番組、などでよく聞く人も多いと思います。
「膝が痛いから」「今後、膝がダメになるのが怖いから」という意識で毎日欠かさず飲み続けている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
値段にも幅があり、薬局やネットで手頃に購入できるサプリメントですが、実際に効果の医学的なエビデンスはあるのでしょうか。
今回は、そんなグルコサミンやコンドロイチンについて医師が解説していきます。
目次
グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントが膝関節痛に効果があるとする科学的な証拠は不十分
グルコサミンとコンドロイチンは、膝の関節痛に対するサプリメントとしてよく知られています。これらの成分は、軟骨の健康を維持するための重要な役割を果たしているとされており、すでにたくさんのグルコサミンとコンドロイチンサプリメントの効果については研究が続けられています。
しかし、一部の研究では効果が見られなかったり、他の治療法と同等の効果しかないと報告されています。
アメリカを代表とする米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)やアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)ではグルコサミンやコンドロイチンなどは痛みを軽減するかどうかについて、十分なエビデンスが無いとしています。
これらの研究結果からは、グルコサミンやコンドロイチンが膝関節痛に対して効果的であるという科学的な証拠は不十分であると言う見解が有力です。[2]
グルコサミンやコンドロイチンって何?
グルコサミンとコンドロイチンは、関節の衝撃を吸収する組織である軟骨の構成要素で、どちらも体内で自然に生成されます。
グルコサミンはアミノ糖、コンドロイチンは、体内に存在する硫酸化されたグリコサミノグリカンの一種です。
体内のグルコサミンとコンドロイチンは年齢とともに減少していくことが知られています。
また、変形性膝関節症が進行している人の膝軟骨では特に減少していることがわかっています。加齢とともにグルコサミンとコンドロイチンが減少することで、関節のクッションの役割が衰え、膝が動かしにくくなったり、痛みが生じるのです。[1]
グロコサミンやコンドロイチンが膝関節痛に効果がないのはなぜ?
グルコサミンやコンドロイチンが膝関節痛に効果がないとされている原因は、大きく3つの要因が考えられています。
膝の痛みの原因は様々でサプリメントの成分が関与しない部位もある
膝関節痛の原因は様々であり、複合的であるため、グルコサミンやコンドロイチンが関与しない部位の痛みである可能性もあります。
膝関節痛は、軟骨の摩耗や損傷、炎症、骨と骨の接触など、多くの複合的な要因によって引き起こされることがあります。
そのため、サプリメントだけでは痛みの原因を解決することができない場合があるのです。
消化管を通ることでサプリメントの成分が消化・分解される
サプリメントとして口から摂取し消化管を通ることで消化・分解されてしまうからです。
せっかくグルコサミンやコンドロイチンといった効果のある成分を飲んでも、一度消化・分解され、体内の材料単位にまで分解されてしまいます。
再度、グルコサミンやコンドロイチンといった、膝の関節の衝撃吸収に役立つ成分として生成されるかは体次第となります。
膝の軟骨は血流が乏しい組織のため、サプリメントの成分が届きづらい
軟骨はもともと血流が乏しい組織であり、有効な成分が吸収され血流に乗っても、成分を軟骨まで届けることが難しい点です。
以上のような要因が、グルコサミンやコンドロイチンが膝関節痛に効果がない原因として考えられます。
適切な治療方法を検討しましょう
グルコサミンやコンドロイチンを摂取することが膝の関節痛を改善するための唯一の治療法ではありません。
痛みや不快感を軽減するためには、軟骨や関節を強化するための運動や体重管理などのライフスタイルの変化も必要です。
また、医師や専門家に相談して、適切な治療法を選択することが重要です。
1.佐藤正夫. 膝関節液中のプロテオグリカン、グリコサミノグリカン濃度 -女性例での検討-. 中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集. 2005.