手首を反らせると痛いときに考えられる病気について解説します。捻挫や骨折だけなく、手術が必要な疾患の可能性もありますので、まずは整形外科を受診しましょう。
目次
手首を反らせると痛い時に考えられる病気と受診の勧め
手首を反らせたときに痛みを感じる症状は、怪我から病気までさまざまです。痛みの程度も一時的なものから、長期的なものまであり、どのように対処したらよいか迷うこともあるかもしれません。
この記事では、手首を反らせると痛みを感じる際に考えられる病気や怪我について、原因から対処法、そして受診の目安まで解説します。自分自身の健康を守るために、手首の痛みを軽視せず、適切な対処を行いましょう。
怪我や衝撃が加わった場合|捻挫のケース
手首を反らせた時に痛みを感じる原因の一つに捻挫があります。捻挫は、手首に強い衝撃が加わったり、無理な動きをした際に発生します。
ここでは、捻挫の応急処置と受診の目安について解説しますので、参考にしてください。
捻挫の応急処置
捻挫の応急処置は、以下のRICE処置が基本となります。
Rest(安静) | そえ木や固い段ボールなどで患部を動かないように固定します。腕の場合は、顔を洗うような姿勢にして固定をします。 |
Ice(冷却) | 冷やすことで腫れを抑え、痛みを軽減させます。冷やす際には氷嚢や冷却パックを使用し、1回につき20分程度を目安に冷やします。60分周期で繰り返し、48時間続けます。※直接肌に当てないよう、タオルなどで包んで使用します。 |
Compression(圧迫) | 弾性包帯などで軽く圧迫することで腫れを抑えます。過度に圧迫して、神経麻痺や循環障害を生じないよう注意が必要です。 |
Elevation(挙上) | 静脈血の流れをよくするため、心臓よりも高い位置に患部を上げます。血流をよくすることで腫れを軽減させる目的です。クッションや枕を使って手首を上げるとよいでしょう。 |
捻挫の受診の目安
捻挫の場合、軽度であれば自宅での応急処置だけで回復することもあります。しかし、次のような症状がある場合は、整形外科を受診することをお勧めします。
- 痛みが強い:応急処置をしても痛みが引かず、日常生活に支障をきたす場合
- 腫れがひどい:手首全体が大きく腫れ、色が変わっている場合
- 動かせない:手首を動かすことが難しく、激しい痛みを感じる場合
- 変形が見られる:手首の形が明らかに変わっている場合
これらの症状がある場合は、骨折や靱帯の損傷など、より重篤な問題がある可能性があります。早めに整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
怪我や衝撃が加わった場合|橈骨遠位端骨折・舟状骨骨折のケース
手首を反らせた時に痛みを感じるもう一つの原因として、骨折があります。特に、橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折や舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折は手首の怪我としてよく見られるものです。
ここでは、それぞれの骨折について解説し、治療法についても紹介しますので、参考にしてください。
橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折とは
橈骨遠位端は、前腕にある2本の長い骨のうちの一つ、橈骨(親指側)の手首に近い部分です。この部位は、転倒して手をついた時などに骨折しやすい場所です。橈骨遠位端骨折は、特に高齢者に多く見られますが、スポーツ中の怪我や交通事故など、さまざまな状況で発生する可能性があります。
舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折とは
舟状骨は、親指の付け根よりさらに手首側に位置する小さな骨で、手首の動きを支える重要な役割を果たしています。この骨は、手首を強く打ったり、転倒して手をついた時などに骨折することがあります。
舟状骨骨折は、他の手首の骨折に比べて診断が難しく、放置すると治りにくい特徴があります。特にレントゲン撮影では判断つかないことが多く、MRIで発見されることもある骨折です。
橈骨遠位端骨折・舟状骨骨折の治療法
橈骨遠位端骨折や舟状骨骨折が疑われる場合、整形外科での適切な診断と治療が必要です。以下に、一般的な治療法を紹介します。
診断
医師が手首の状態を視診・触診し、必要に応じてレントゲン撮影やMRI検査を行います。これにより、骨折の位置や程度を正確に把握します。
固定
骨折が確認された場合、ギプスなどで手首を固定し動かさないようにします。骨が自然に回復するまで(4〜6週間)固定を続けます。
手術
骨折の状態がひどい場合や、骨片がずれている場合には、手術が必要になることがあります。手術では、金属プレートやスクリューを使用して骨を正しい位置に固定します。
リハビリテーション
固定期間が終わった後、手首の動きや筋力を回復させるために、リハビリテーションが行われます。
理学療法士の指導のもと、適切な運動を行うことで手首の機能を取り戻します。
橈骨遠位端骨折や舟状骨骨折は、早期の診断と治療が回復に大きく影響します。手首を反らせた時の痛みが強く、腫れや変形が見られる場合は、すぐに整形外科を受診することをお勧めします。
握力が弱くなり、手首の動きに制限がある場合|キーンベック病
手首を反らせた時に痛みを感じ、さらに握力の低下や手首の動きに制限がある場合、キーンベック病の可能性があります。ここでは、キーンベック病の概要と治療法について詳しく説明します。
キーンベック病とは
キーンベック病は、手首に8つある手根骨(しゅこんこつ)の中央に位置する月状骨(げつじょうこつ)が血行不良によって壊死する病気です。原因は詳しくはわかっていませんが、手をよく使う青壮年の男性に多く見られます。
手首の痛みや腫れ、握力の低下、そして手首の動きの制限を引き起こします。
レントゲン撮影でわかることもありますが、MRI検査でより詳しい状況がわかります。
月状骨が壊死すると、手首の他の骨や関節にも影響を与え、長期的には手首全体の機能障害を引き起こすことがあります。キーンベック病は進行性の病気であり、放置すると症状が悪化するため、早期の診断と治療が重要です。
キーンベック病の治療法
キーンベック病の治療法は、病気の進行度や患者さんの症状によって異なります。以下に、一般的な治療法を紹介します。
保存療法
初期段階では、手首の安静や装具による固定などの保存的な治療が行われます。抗炎症薬や鎮痛薬が処方されることがあります。
手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、病気が進行している場合には手術が検討されます。手術の方法には、以下のようなものがあります。
- 橈骨短縮骨切り術:月状骨への圧力を減らす手術です。
- 骨移植(遊離や血管柄付きなど):壊死した骨の代わりに健康な骨を移植します。
- 月状骨を摘出し、腱球挿入:壊死した月状骨を取り除き、腱でスペーサーを作ります。
リハビリテーション
手術後や保存療法中には、リハビリテーションが重要です。手首の動きを取り戻し、筋力を強化するために、理学療法士の指導のもとで適切な運動を行います。
キーンベック病は早期発見と適切な治療が回復の鍵となります。手首の痛みや動きの制限、握力の低下が見られる場合は、早めに整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
まとめ:痛みが強い、長引く場合はまずは整形外科へ
手首を反らせた時に痛みを感じる場合、その原因は捻挫や骨折、さらにはキーンベック病のような深刻な病気までさまざまです。自己判断で放置すると、症状が悪化し治療が遅れることがあります。
そのため、手首の痛みが強い場合や、痛みが長引く場合は、まずは整形外科を受診してMRIなどの検査を受けることで疾患を特定できる場合もあります。適切な診断と治療を受けることで、痛みの原因を特定し、健康な手首を取り戻しましょう。